10月7日に耳納市民センター(久留米市善導寺町飯田)で開かれた、宮津航一さんの講演「こうのとりのゆりかごから始まる第2の人生」。久留米市と久留米市人権啓発推進協議会が主催する「なるほど人権セミナー2026」の第4回で、宮津さんは自身の経験を通じ、子どもたちの命と育ちを支える社会の在り方を語った。

前編では、生い立ちや「最後まで味方」でいてくれた家族との絆、子ども食堂や「子ども大学くまもと」を始めた経緯を紹介した。後編では、こうした活動や当事者としての発信に込める思いと、自らも父親となった宮津さんの現在を伝える。
宮津さんは、自身の生い立ちからかわいそうだと思われることもあるが、「人や機会に恵まれ、幸せを感じている」という。自身が受け取ってきた支えを子どもたちにも届けたいと、置かれた環境にかかわらず、さまざまな人の経験や生き方に触れ、可能性や視野を広げる機会を設けている。
生い立ちを公表した理由には、命をつないでもらったことへの感謝と、同じような境遇の子どもたちへの思いがあるという。小学生の頃から匿名で発信してきたが、当事者の声が十分に社会に届いていないと感じ、実名での公表を決意。自身の発信を通じて、一人ではないと知ってほしいと語った。
ゆりかごに関わる課題として、子どもへの生い立ちの告知や、預けられた後の成長の把握、出自が分からない子どもへの支援にも言及した。宮津さん自身は、両親が年齢や理解に応じて生い立ちを伝えてくれたという。過去をなかったことにせず、子どもが自分の人生を前向きに受け止められるように伝える大切さを話した。
また、預けた母親だけを責めても状況は変わらないと指摘。命をつなごうとした判断を尊重し、追い詰められた人の声を受け止め、社会で支える必要があると訴えた。ゆりかごの必要・不必要を論じるだけでなく、「社会の理解」を広げたいと説明。「赤ちゃんポスト」という呼び方ではなく、「こうのとりのゆりかご」、または「ゆりかご」と呼んでほしいとも伝えた。
これまでの講演で寄せられた感想の中から、福岡の農家の人が贈った、「麦の穂を切り開いて先頭を歩く人は体や目に痛みを受けるが、その跡を歩く人は進みやすくなる」という言葉を紹介。自身の後に続く子どもたちが、社会に理解されながら歩みやすくなることを願って発信を続けていると話した。
ゆりかごを増やすことが最終的な目標ではなく、必要とされない社会をつくることが大切だとしながら、現在もその助けを必要とする人がいると説明。ゆりかごの開設に取り組んだ産婦人科医・蓮田太二さんの「その先の子どもが幸せでなければ意味がない」という言葉を紹介し、命を救った後の子どもたちの幸せを、社会で支えていく必要性を訴えた。参加者には、まず知り、理解し、聞いたことを身近な人に伝えることから始めてほしいと呼びかけた。
講演の終盤には、著書「生まれてきて、よかった」を紹介。講演では伝えきれない生い立ちへの葛藤や当時の心境もつづったという。

私生活では8月に結婚し、小学2年生の息子の父親になったことを報告。来年には家族が増える予定も明かした。当日は妻と息子も来場し、宮津さんが紹介すると会場から拍手が送られた。これまで家族にしてもらったことを、今度は父親、夫として返していく立場になったと話し、その歩みも再び久留米で伝えたいと語った。
最後に、好きな言葉として「置かれた場所で咲きなさい」を紹介。幼い頃に自分の生い立ちを人と比べていた時、この言葉に出合い、それぞれの場所で花を咲かせればよいと考えられるようになったという。参加者自身が自分の場所で花を咲かせるとともに、関わる子どもたちも花を咲かせられるよう、支える存在になってほしいと締めくくった。