久留米市美術館(久留米市野中町)で現在、企画展「開館10周年 ちくごist(イスト) 河北秀也 デザインの旅」が開催されている。筑後地方にゆかりのある作家を紹介するシリーズの第3弾で、久留米市出身のアートディレクター、河北秀也さんの作品約120点を展示する。河北さんは、主役は商品そのものであり、デザインはあくまで額縁であるとの考えのもと、使う人の気持ちを一番に考えたデザインを心がけている。
河北さんは1947(昭和22)年、久留米市生まれ。中学3年の春休み、石橋文化センターが募集した記念スタンプの図案に応募し、佳作に入選した。審査は石橋美術館(現・久留米市美術館)で行われ、この経験がデザイナーとしての原点ともいえる出来事となった。自身の原点となった場所で展覧会が企画されたことについて、「偶然ではなく必然だったと感じた」と、8月29日に開かれた同展の講演会で話した。
会場では、東京芸術大学在学中に手がけたサクマ製菓「いちごみるく」のパッケージ、旧営団地下鉄(現・東京メトロ)の路線図、マナーポスターなどを展示する。鉄道好きだった河北さんは、当時の路線図が地方から上京した高齢者をはじめとする利用者にとって分かりにくいと感じ、1972(昭和47)年、路線を色分けし、駅名や乗り換え情報を整理した新たな路線図を制作。映画などを題材に乗車マナーを伝えたポスターも代表作となった。
麦焼酎「いいちこ」の仕事には1983(昭和58)年から本格的に携わった。姉と義兄が三和酒類(大分県宇佐市)に勤め、自身も高校時代の一時期を宇佐で過ごした縁から依頼を受けた。1984(昭和59)年から駅貼りポスターを制作し、CMの構成、音楽の選定、ナレーションなど広告全般を手がけてきた。
商品を前面に押し出さず、見る人の記憶や感覚に働きかける表現が特徴。一般的なテレビCMが15秒~30秒なのに対し、河北さんがプロデュースするCMは60秒で、ゆっくりとした音楽と自然の風景を組み合わせ、落ち着いて酒を味わう時間を表現する。ビリー・バンバンの澄んだ歌声がイメージに合うと考え、河北さんが起用を決めたという。
撮影地には、看板や電線が少なく、日本の原風景に近い懐かしさや、麦、土、清らかな自然を感じさせる海外の場所を選んだ。CM撮影に合わせてポスターも制作し、コンセプトを共通させている。第5展示室では歴代CMを上映する。
担当学芸員の井須圭太郎さんは「駅で見るポスターと、美術館の展示空間で見るポスターでは、見え方や印象が違ってくると思う。ぜひ会場で河北さんのデザインへのこだわりを実感してほしい」と話す。
開館時間は10時~17時(入館は16時30分まで)。月曜休館(9月21日、10月12日は開館)。
入館料は、一般=800円、65歳以上=500円、大学生=400円、高校生以下無料。10月12日まで。